2016/09/23

BIOS更新失敗は CMOSクリアでは修復出来ない

最近 BIOS のアップデートをしていて、アップデートに失敗した時のことが気になったので調べてみた。その時、CMOSクリアを勧めるページを多く見かけた。しかし、CMOSクリアでは BIOSアップデート失敗の修復は出来ない。その理由をまとめてみた。

CMOSクリアとは



CMOSクリアとはその中に保存されているデータを全て消去することだ。したがって、CMOSクリアをすると、BIOSの設定も消去され、CMOS-RAM は工場出荷時の状態に戻る (初期化される)。CMOSクリアをする一般的な方法は
  1. PC をシャットダウンする。
  2. 電源ケーブルをコンセントから抜く。
  3. マザーボード上の CMOS 保存用の電池 (リチウムイオン電池) を外す。
  4. 電池を外したままで約10分ほど放置する。
これで CMOS-RAM は工場出荷時の状態に戻るので、電池を元に戻して、ケーブルをコンセントにつなげばよい。


BIOS とその設定の保存


BIOS は PC に電源が入るとすぐに起動し、接続されているハードウェアの情報を集める。そして OS をロードし、集めたハードウェアの情報を OS に渡す。BIOS はその性格上、初めのうちは書き換え (アップデート) を想定しておらず、ROM (読み出し専用不揮発性メモリー) に保存されていた。これがその後、Flash Memory (読み出し書き込み可能な不揮発性メモリー) に記憶されるようになった。また、80286 CPU 登場以降は BIOS の設定は不揮発性BIOSメモリー (CMOS-RAM) に保存されるようになった。(参照:1,2) 80386 CPU 登場以降は CMOS-RAM に RTC (real-time clock) が統合され、現在の時刻も保存されるようになった。(参照:7) 現在ではこの CMOS-RAM はマザーボード上の Southbridge (サウスブリッジ) に組み込まれており、ほとんど単体で見ることは無いだろう。(参照:2) 


なぜ CMOSクリアで BIOSアップデート失敗の修復が出来ないのか


CMOSクリアを実行すると CMOS-RAM に保存したデータは消去され、CMOS-RAM は工場出荷時の状態に戻る (初期化される)。これによって CMOS-RAM に保存されている BIOS の設定も消去される。つまり、CMOSクリアによって、BIOS の設定が消去されるのであって、BIOS が初期化される分けではない。そもそも BIOS は COMS-RAM とは別の不揮発性メモリーに保存されているので、CMOSクリアでこのメモリーは初期化出来ない。


ではなぜこの様な誤解が生じるのか。


”BIOS の設定の初期化” のことをしばしば ”BIOS の初期化” と表現している事があるが、これは上記のとおり正しくない。(参照:8) ”BIOS の初期化” という表現を見た人たちが

  BIOS の初期化 → BIOS を工場出荷時の状態に戻す → BIOS 書き換え失敗の修復
  
と誤解したのではないか。


参照

1. BIOS (jap.)
2. BIOS (en)
3. ROM (Read only Memory)
4. Flash Memory
5. 不揮発性メモリー
6. 不揮発性BIOSメモリー
7. CMOS-RAM
8. 設定初期化 (CMOSクリア) 

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