3. 乱数(試行)を用いた計算やシミュレーション
手計算で求めるのは割と厄介なのに,コンピュータにとっては非常に簡単になってしまう問題に,色々な確率の問題がある.例えば打率3割の打者が年間500回打席に立つとして,打席連続ヒットが出ない事が15回以上ある,というのは,どのくらいの確率で起きるのか?
コンピュータにこれを計算させるのは非常に簡単で,要は「実際に0.3の確率で「当たり」となるようなクジを500回引く」 ということを何度も繰り返し,「15打席連続ハズレが1回以上ある」回数を数えれば良い. 100000回繰り返して,31234回そのような事があったら,確率はおよそ0.31くらいと言うことだろう(試しに今やってみると0.51と出た.3割打者もシーズン中15連続無安打と言うことはざらにあるということ).
微分方程式の例と同じく,これは「試行」をコンピュータで行うことさえできれば,およそどんな確率でも計算できるし,期待値なども計算できる.例えば様々な要素で株の値段が上下する時に,自分の持っている株全体の値打ち(明日の株価の期待値)はいくらか,などという計算も簡単にできる.
これを用いて,元々は確率の計算ではなかったものを,乱数(試行)を用いて求める計算方法が存在する.例えば3次元空間内で,
\[x^2 + y^2 + z^2 \leq 1, x + y + z \geq \] で表される領域の体積を求めるという問題を考える(手計算でも求められるが,ここで例題として使う).方法は驚くほど単純で,
1. 点 $(x, y, z)\,$ をランダムに生成する. ただし,
$0 \leq x \leq 1$, $0 \leq y \leq 1$, $0 \leq z \leq 1$
とする.
2. $x^2 + y^2 + z^2 \leq 1$, $x + y + z \geq 1$ を満たしているかを検査
3. 1と2を多数回繰り返し, 満たした回数の割合を答えとする.
というものである. 要するに,単位立方体の中に点をたくさん投げ込んで,考えている領域の中に入ったら当たり,入らなかったらハズレとして,当たりの確率を計算していることになる.
詳細は省略するが,この方法の発展として,実際に起きやすい点を重点的に生成するという方法(重み付きサンプリング)が存在する.つまり,上記では単位立方体の中に点を一様に生成したが,そうではなく例えば原点の近くによりたくさんの点が生成されるようにしたりすることが可能である.
この方法を用いると,コンピュータを用いて様々な問題の「解」を効率的に探索する事ができるようになる.例えばある関数 $f(x,y, z)\,$ を最大にする $(x,y, z)\,$ を求めたいが,その答えは解析的には求まらないとする.コンピュータを用いてこれを(運が良ければ)求める安直な方法は,色々な $(x,y, z)\,$ をひたすら生成し,その最大値をとるというものである(もちろん必ず正解が求まるという保証はないが).そうする代わりに, $f(x, y, z)\,$ の値が大きい点の付近だけを「重点的に」生成すると言う方法がある.
出典:Motivation to learn computer
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